KLEIN HOME バイク ディーラーネットワーク コンタクト @クライン 技術について
インデックス
フレームアライメント
熱処理フレーム
隙間のない溶接
ゲイリー・クライン物語
トピックス
新しい素材 ZR9000
Introducing the New ZR 9000 Alloy

我々がバイクのためだけに開発した、新しいフレーム素材をご紹介する。その素材を、ZR 9000と名付けた。

優れたフレーム素材は、より良いバイク作りのために生かされなければならない。もしこの素材を使っているのに、フレームが軽くもなく、良い走りやより良い付加価値をあなたに提供しなかったら、この最新のすばらしい素材の利点は意味を持たなくなる。

最新のZR 9000を使用したモデルは、6061のアルミを使用したモデルより最大190gも軽量かつ、より強靭で、耐久性も約5倍になっている!

軽くて、強靭で耐久性のある新しい素材を使ったバイクが、2001年とほぼ同じ価格である事に満足する人がいる。しかし、もっと詳しくこの技術について知りたい人もいるだろう。より詳しい説明を、ZR 9000の開発者に聞いてみた。

 

バイクフレームのためのマテリアルデザイン
ゲイリー・クライン

宣伝文句
様々なフレーム素材に関して一般的に言われている特性は、高温焼戻し状態での材質特性であり、バイクフレームとして溶接又はろう付けされた後のフレームチューブとしての強さを表していない。そのため溶接された素材は、材質の化学的な特性は変わらないが、宣伝されている強度は失われている。

更に、一般的に言われている強度は材質自身の特性であり、フレームチューブの径や厚みなど、バイク用にデザインされる事を考慮した特性を表示していない。これらの事は、最終製品であるフレームの強度全般に大きく影響する。少なくともバイクの乗り方にも影響する。考えないといけないのは、一般的に言われている材料特性と、フレームとしての耐久性、軽量性は同じではないということ。もし2つのフレームの強度を比べたいなら、両方ともテストしてみないといけない。そして、乗り心地を比較したいなら仕様を見るより実際に乗ってみる事が必要になる。

なぜアルミニウム?
70年代前半、私が最初のスタートラインに立った時、私の周りにあるロードバイクの平均重量は、約10kgだった。私のバイクの品質は平均的だったが、フレームが最も重い部品だった。しかも、そのような重いフレームでありながら、スプリントに求められるフレーム強度は十分でなかった。

当時、私はボストンにあるマサチューセッツ工科大学の学生だった。教授と私と何人かの学生で、何がバイクフレームに適する素材かを捜し始めた。当時の一般向け高級バイクフレームは、ダブルバテッドクロムモリブデン鋼でできていた。鋼は加工し易いが密度が高いため、私の高級レース用バイクに使っている肉薄のフレームでも重かった。

我々の目標は、より軽く、より丈夫で強固なフレームを作ることだった。この目標を達成するため、最初に取り組んだ事が、鋼より比重の軽い素材を作る事であった。軽い素材として選定したのは、アルミニウム、マグネシウム、チタニウムそしてカーボンファイバー。それぞれの素材は、いくつかの利点があるように見えた。我々は、少量の試作車を作る簡単な方法も捜し、軽くて丈夫なフレームを簡単に製造できる材質を見つけることを願っていた。

様々な素材を試した結果、たった一つの素材が我々の目的にマッチした。カーボンファイバーは、それぞれのフレームサイズとジオメトリーごとに特別の金型を必要とし、多くの時間と費用が掛かってしまう。

チタニウムは非常に高価な上に、溶接する部分は空気を遮断するためのシーリングが必要で、非常に難しかった。更に費用の事を無視したとしても、バイクに最適なサイズの管材を入手する事が困難だった。しかも最も流通していた管材は、強度的にも問題があった。

マグネシウムは最も軽い素材であり、最初は適しているようにみえたが、アルミニウムのような延性が無く、溶接が難しかった。さらに、必要としたサイズの管材がすぐに見つからなかった。その他にマグネシウムの耐食性能問題もあった。我々のいたボストンでは、冬季には道に凍結防止のため塩が撒かれる。そのため、鋼より耐食性能の劣るマグネシウムは、我々の求めるフレーム素材には適していなかった。

多くの検討の後、アルミニウムを素材として選択した。我々は、最高の性能を持つフレームを求めていたので、最も強靭なアルミニウム合金を検討した。しかし残念な事に、それらの素材は、溶接が難しく、腐食に弱い等の問題があった。

最終的に、6061アルミニウムを使うことで問題は解決した。このアルミニウムは、構造アルミニウム合金としてうってつけの材質で、我々が必要としていたほとんどすべての要件を備えていた。また溶接、機械加工が容易で、室温で成形が可能な上、耐腐食性能も良好。(この素材は舶用に広く使用されている) 更に良い点は、6061は航空機に広範囲に使用されており、様々な直径の管材の入手が容易であった。

アルミニウム
純粋なアルミニウムは非常に柔らかい。このようなアルミニウムでは、分子が直線的に結合しており、あらゆる方向に簡単に分子が移動するので、バイクフレームを作るには、強度が十分ではない。

アルミニウムは、他の物質を混ぜて合金にする事で、違った特徴を出す事ができる。これらアルミニウムの合金類は、添加した物質が明示され、ASTM (American Society of Testing and Materials)によって番号が付けられている。6061アルミニウムは、少量のマグネシウム、シリカ、クロムを純粋なアルミニウムに添加させている。この合金の強度は、負荷が掛かった時にアルミニウム結晶がずれるのを、添加した微細な凝集物(ケイ酸マグネシウム結晶)が止める事から得られるのだ。ちょうど、ベアリングの中に砂を入れるのと同じ事である。

アルミニウム合金は、更に機械的な加工によっても強度を増すことができる。例えば、冷間引抜によるチューブの製作も、そのひとつである。これにより、アルミニウム結晶中に微細な傷や歪みを作り、金属分子の移動が起りにくくなる。

アルミニウムの溶接
一般的に6061や、他のアルミニウム合金を溶接する時、素材にとって好ましくない事がおきる。

アルミニウムは、温度変化によるパイプ径の変化が、鉄に比べはるかに大きい。溶接部がさめると、その部分は縮小し隣接する部分を引っ張る。この事は、アルミニウム合金を使う場合、溶接による歪みが大きくなり、溶接が完了した後、材料に高い残留応力が残ることを意味する。

そして、機械加工によりチューブの強度が増したとしても、溶接の際、高温にさらされる部分の近辺では、冷間加工で得られた強度が失われる事になる。

バイク用管材として6061を使用する場合、焼き入れにあたる『溶体化処理』と、アルミに粘りを出すための『人工時効処理』を含んだT6プロセスによって、最適な大きさのケイ酸マグネシウム結晶を最適に分散させる。しかし、溶接の高温にさらすと、ケイ酸マグネシウム結晶が溶け、小さい結晶が大きくなってしまい、熱処理の効果を奪い取って溶接部周辺の材料を弱くする。

アルミニウムの熱処理
溶接の後、6061は強度を失う。強度を高め、耐久性のある軽いフレームにするため、我々は溶接した後のフレーム全体を、熱処理する以外にないと判断した。T6 条件でのフレーム全体の熱処理とは、全体を高温に熱して急冷し硬度を上げる『溶体化処理』(焼入れ)と、これを再び温めてからゆっくり冷まし粘りを出すための『人工時効処理』略して『時効処理』(焼き戻し)があり、この処理をすることで溶接により生じた残留応力を取り去ることができる。

もちろん、我々だけがフレーム全体に『溶体化処理』と『時効処理』を行っている製造業者ではない。いつくかの製造業者も6061又は他の6000系アルミフレームに同じような処理をしている。

しばしば使われる7000系アルミフレームは、殆どのものが熱処理されていない。6000系アルミの場合、『溶体化処理』し強度を高めた素材を、溶接後『時効処理』を行うことで、溶接部の歪を取り、素材に粘りを持たせ強度を増やす。しかし7000系アルミを使った場合は、部分的に熱が加えられたままである。

7000系アルミの場合、そのままでも溶接部分は『時効』化する特性があるのだが、溶接する際に発生した残留応力のため、溶接部の応力腐食割れを発生することがある。またこれを防ぐため、標準熱処理条件より高い条件(温度・時間)で『過時効処理』したものは、溶接部の強度は強化されるものの、それに隣接するチューブの部分は焼き鈍されてしまい弱くなる。結果的に7000系アルミは、材料自体は6061より強靭だが、溶接後は弱くなる可能性が高い。

粒子の発展
限られた工場にしか、疲労寿命を考慮したアルミニウムフレームのデザインをすることはできない。もし我々が6061 T6でクロムモリブデン鋼と同じ疲労強度を持つフレームを作ろうとしたら、その6061製フレームは、はるかに高い捻り強度と必要以上の剛性を持つが、最適な重量よりはるかに重いものになってしまう。

私は、軽いフレームを作りたかった、そこで、80年代前半、私はより高い疲労強度を持つアルミニウム合金を捜し始めた。6000シリーズ合金の中のいくつかに、条件が少しだけ当てはまるものがあった。

高耐久性合金の問題は、合金が高温にさらされたり、ストレスが掛かった時に、硬化物質の存在がアルミニウム結晶(粒)を生成してしまう事である。この生成された大きな粒子は、結果として強度特性を弱めてしまう。

ひとつのクラインフレームが出来上がるまでには、様々な工程がある。高温炉で素材を焼きなまし、素材を柔らかくして、いくつかのタイプのバテッド処理、絞り加工、成形、曲げ加工を施される。これらは前工程で受けた強い影響を取り去るため、焼きなましをおこなってから次の加工がされる。そして、それらの加工が終了後『溶体化処理』と『時効処理』を行い、材料の強度を戻し次の工程に移るのである。

私は、アルコア社の研究開発センターに行き、何人かの材料の専門家と話をした。彼らは私に言った、「あなたが興味を持っている、高い強靭性のある6000系アロイを使うことはできない。理由は製造工程のなかで制御できない粒子の成長が見られるから。」

しかし6061は、この粒子の成長を遅くするために微量のクロムを使っている。この事が、初期のフレームに良い働きをした。私は最初の試みに於いて、6061にかわる良い素材を見出せなかった。

より良いアルミニウム合金の製法の開発
私は冶金学者ではない。しかし私は、バイクの製造工程とより良いバイクを作るために必要な事を理解していた。そして私は、そのために何をすれば良いのかも判っていたし、他のアルミ合金とその特性についても、かなりの研究をしてきていたことで理解していた。そこで私は何人かの冶金学者と、このバイク専用アルミ合金の開発に関するする方法について助言をもらうために話し合った。

1990年頃、私はリチウムを添加したアルミニウム合金に注目し始めた。これらの材料は、典型的なアルミニウム合金とは違い、分子が大変小さく高密度になる。しかし、これらは完璧ではなく、克服しなければならない、いくつか特有の問題がある。航空機産業は、この材料開発に数億円を掛けたが、現在まであまり多く使用されていない。

私が注目したそのリチウムアルミニウム合金の特徴は、分子結晶の大きさを制御するためにジルコニウムを添加物として利用していることだった。我々のテストによると、ジルコニウムは大いに効果があるように見えた。そこで、バイクフレーム専用のアルミ合金をつくる決心をしたとき、私は6061合金に本来添加する筈のクロムを止め、代わりにジルコニウムを添加することにした。

我々はフレームを製造する時、何回にも渡り熱処理を行う。しかし何度も繰り返す熱処理にかかる時間は、出来るだけ短い方が良い。そこで私は、添加物のシリコンとマグネシウムの量をふやし、加熱処理の効果を促進させるようにした。

しかも私は銅を添加する量も増やした。銅は添加物として使う場合、素材の強度を増す効果が大きく高い耐疲労性を示す。そこで私は銅を増やせば、新しく作ろうとしている合金の耐疲労性強度を増やせるのではないかと考えた。

我々が素材に求める事の一つに、「素材が柔らかい状態のとき大まかな成形を室温で行える」と言う項目があった。自動車業界では、いくつかの6000シリーズ合金を複雑な自動車ボディ−に使用している。これらは、6009 と 6010合金を主に使用しており、これら自動車に使用される合金と、他の6000系合金の際立った違いは、マンガンが添加されていることである。そこで、私は成形性の向上のため、新しく作る合金に少しだけマンガンを加えた。

どうか、私に少し合金を作ってもらえませんか?

新しいアルミ合金を試作する時の問題は、試作のための合金を作ってくれる高い技術を持った工場が必要なことだ。試作合金は、『炉』の関係で1回につき20トンも出来上がる。しかし、試作合金が満足の行くものでない場合、その全てが無駄にになってしまうのだ。そのため、私は材料の配合を慎重に推測、検討し、試作品を作ることにした。

すばらしい結果
新しく出来た合金の性質は、非常にすばらしいものであった。6061に比べ、きれいに機械加工でき、引裂も少ない。溶接もしやすい上、熱処理も短時間で素晴らしい効果が上がった。新しい合金は、6061と比べ何の問題もなしにフレームを作る事ができる。我々は新しい合金にZR 9000と名付けた。

完成品の状態での、ZR 9000のテストは大変うまくいった。同一形状フレームの引っ張りテストで、耐力強度は6061より約1/3向上。我々の疲労耐久性テスト機械で、ZR 9000製フレームは従来の5倍のストレスに耐えた。

これらの結果は私が望んでいたもの、そのものである。それは、『フレームチューブの強度を向上させ、疲労寿命を高め、その恩恵を受けた部分で重量を減らす』という、新しい素材の高い特性を利用することであった。

このZR9000アルミニウム合金は、高性能なバイクフレームを作るための、フレームの能力を最高に引き出すために作られた、初めての素材であると私は考えている。

(C) 2007 KLEIN BIKES